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第三者によるドイツの教育改革レポート
「学力」低下の危惧 ドイツの教育に、「ゆとり」「実質的」などのイメージを持っている人が多いのではないかと思います。実際にそういう面だけを取り上げた情報があふれていますから。
ここでは、2001年に発表された世界共通の「学力」テスト(PISA)の結果に揺れるドイツの実情を理解していただければと思いレポートしました。「学力」とは何かという問いの意味で鍵括弧をつけています。
OECD加盟国政府によってコーディネートされるもので、生徒の知識・技能の実態調査から、世界的な傾向や各国の問題点を浮き彫りにし、どう対処していくかを考えるための「学力」テスト。初回2000年には32カ国265000人の15才が各学校の責任下において参加しました。読解・数学・科学の三種類のテストに加え、学校や生徒の環境や学習意欲などについても調査されました。以後、三年ごとに継続的に実施される計画です。
PISAの報告 簡単な結果だけを取り上げれば、読解テストではドイツは21位。ちなみに首位がフィンランド、韓国、カナダ、日本と続きます。ドイツ語自体の難解度を原因に持って来られないことは、同じドイツ語国オーストリアが11位であることからも明らかでしょう。ドイツは面目丸つぶれといったところです。
数学では20位。首位は日本、次に韓国、ニュージーランド、フィンランド。科学でも20位。この首位は韓国、そして日本、フィンランド、イギリス・・・。
日本でも順位の方が先行して報道されたのではないかと思います。ドイツでも同様です。比べっこは一番わかりやすい評価方法でもありますから。
PISAのHPでは15才の学習者における傾向性と問題点を分析するとともに、生涯学習の観点から、自ら学ぶ意欲と力を養うことの重要性を前提としたうえで、そのための考察を行っています。(ここが実は本来の目的だったのではないかと思うのですが。)
例えば、ほとんどの国で4分の1以上の生徒が学校にできれば行きたくないと思っていると報じています。また、意外にも全体の半分が読書に対して積極的(雑誌などを含んでいる)とのこと。おもしろいのが、前者の調査で20%を下回った(つまり学校へ行きたくない生徒の割合の少ない)デンマーク・メキシコ・ポルトガルの三国では、同時に後者の調査で約3分の2もの生徒が読書に積極的という結果です。
楽しみのための読書を全くしない生徒:ドイツ42% 日本56%
日に1〜2時間:ドイツ 9% 日本 8%
前者と後者の読解テスト平均点の差:ドイツ84点 日本27点
楽しみのための読書をする生徒は日本では非常に少ないのに読解テストの結果は上位なのです。
どの国にも実生活に必要ないからと数学に対して意欲をもたない生徒が多いことも指摘されています。学校間のポイント差が大きい国の上位にドイツ。首位の国と最下位の国との差よりも国内での学校差の割合の方が大きいという現実は見逃せません。
また、さらなる分析を待たなければ因果関係が立証されないと前置きしながらも、どのような学習方法・学習条件が重要であるのかを知り、学校や親がどう生徒を援助していくのかということを考えなければならないと述べています。そのうちいくつかだけを抜粋します。
現段階の分析で効果的と考えられること
☆学習の過程を自己操作すること
@何を学ばねばならないのかを見つけだす
A不明なことは理解を助ける情報を探す
B学んだことを覚えているか自己診断する
C最重要ポイントを押さえているか自己診断する
(このような学習方法をとっている生徒は読解のポイントが高かったらしい。)
☆競って学習することを好むこと
(いわゆる得点や速度などの競争という狭義ではないと思う)
☆力を合わせて学習することを好むこと
(グループやクラスでの共同作業や話し合いなどでしょう)
中には男女差による結果の分析だとか、学校における学習に非意欲的な生徒は社会に出てからの学習についても同様に非意欲的であるという傾向だとか、納得のいかない記述もあったけれど、それはそれとして利用価値のありそうな結果については受け入れてもいいのではないかと個人的には考えています。
2002,2003の報告では、高ポイントをあげた国や学校の要因を探っていくそうです。
揺れるドイツ PISAの結果は2001年12月始めに報道されました。以来、それにともなう教育者や政治家の討論会が頻繁に行われています。その中では、いつも外国人の生徒が問題にされます。つまりドイツ語理解が不十分な外国人の生徒たちが全体の点を下げているというのです。しかし同様の課題を抱えているオーストリアやスイスはドイツよりも好成績であったことも認めざるを得ません。ドイツでは、ドイツ語理解が不十分な生徒への幼稚園や全日制の学校での援助の遅れをまず改善しなければならないと考えています。
教育費についても論じられています。ドイツでは生徒一人あたり就学10年間において42000ドル を投資しているそうです。これはPISA参加国の平均44000ドルをわずかに下回りますが、むしろ就学前の教育(保育)への投資を増やすことに力を入れるべきではないかという意見もあります。
教育大臣はさっそくフィンランドの学校視察に飛び、その後のインタビューで教育に余裕を持たせることの重要性を改めて主張しました。具体的には、教育課程をもっとスリムにすること、目標と最低時間数を定めたら後は学校や各教師の裁量に任せる部分を増やすこと等です。
学校制度についてもフィンランドのような1年生から9年生まで総合学校に通うシステムをモデル的に実施することも考えられると言っています。PISAの結果から、個人間や学校間の「学力」差が大きいことが数字として明らかになり、学校制度の見直し論が高まってきているからだと思います。連邦ジャーナリズム局 (Bundespresseamt)が2002年4月に実施したアンケート調査結果では、回答者の42%が現在の学校制度に満足、53%は不満だということです。
私的なつぶやき PISAのページとドイツでの報道をもとに客観的な説明をさせてもらいましたが、いかがでしょうか?
ふと考えるのは、もしも日本がドイツのような成績表をもらっていたとしたら、社会はどう反応しただろうかということです。教育関係者は?政治家は?親たちは?そして子どもたちは?日本は確実にパニックに陥るのではないでしょうか。お互いに責任をなすりあう姿が目に浮かんできます。
「学力」とはいったい何なのか、それは数字で計ることが可能なのか、PISAが提言できるのはどの側面であるのか、結果を受け入れる前に考えてておかねばならないことですね。私的には、ドイツが低成績だったことの大きな理由は学校制度だと思っています。日本の15才(高校一年生)は受験勉強で鍛えられたあとの結構飽和状態の生徒。不登校の生徒も増える一方です。一方ドイツは、進級が日本よりは難しいとはいえ、ギムナジウムであればまだ途中段階。他種の学校でも、就職には関心があっても机の上での学習にさらなる意欲がある生徒がどれほどいるのか疑問です。日本の15才とドイツの15才とでは環境がまず違うのではないかと思うのです。例えば小学4年生で同じようなテストをしていたとしたらまた違う結果が出たかもしれません。
エアフルトでの銃殺事件が追い打ちをかけ、ドイツは今、これまでの教育を見直さざるを得ない時に来ています。でも日本のようにやりなさいとは、とても言えません。ドイツはドイツの道を信じて歩んでいって欲しいというのが私の思いなのです。
2003年には二回目のPISAが実施される予定です。
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