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いわゆるコラム。
気が向いたら更新
我が編集部が、現代社会に鋭くメスを入れないよーん。

 
 
 
 

踊る編集長御殿、ピチピチお肉ご対面の巻


  
 

あれは忘れもしない4年前、蒸しかえる夏の夜。

明かりを消した部屋で青白く発光するブラウン管。一日の労働の疲れをいやすべく、ワイングラス片手に画面を見つめる。

当時、「ワンダフルよりトゥナイト2。」派に属していた私の心の師、山本カントクのレポートが映し出されている。
タイトルは確か「現代クラブ事情」(踊る方)。自らの若さをアピールすべく息も絶え絶え踊るカントク。
サタデーナイトフィーバー、カモナ、ダンシンナウ。なかなか面白そうだ。
気がつけばマレンコのチェアを立ち上がり、画面の前でカントクにステップをあわせていた私。
ヒートアップするダンス。往年の記憶がよみがえる。ターン、アンド、ジャンプ

そうその時だ、悪夢のような長い夜が始まったのは。

「ザクッ」鈍い音とともに激痛が右足のつま先を襲う。

どうやら洗濯物のかごに脚を突っ込み切ってしまったようだ。
無意識に、手でつま先を押さえる。
恐る恐る手を放しつま先を見る。
だが一見どこにも傷が認められない。
わずかに出血している程度だ。
安堵とともに、再度つま先を見てみる。
何かが違う・・・。
怪我をしていない左足と見比べて、ようやくその違和感の正体を突き止めた。

右足の人さし指と中指の間の裂け目がどうみても、反対の足より深く切れ込んでいる(恐)。

しかも2センチ弱も。勇気を振り絞り、その長い切れ込みの出来た指の間を開いてみた。
ぱっかりと開きましたよ、そら、ぱっかりと
ご開帳だ・・・。
切れ目からは捕れたてピチピチ三崎マグロの赤身の様なお肉が。
鮮血が吹き出る。と同時に血の気が引き床にへたり込む。

もう普通の病院はとっくに閉まってる時間。応急処置として、出血を押さえなくては。寝っ転がって、足を心臓より高く上げる。かなり間抜けな格好で、どうみても独りマングリ返し状態だ。

 

このとき、もし加藤鷹に攻められていたならば、確実に潮を吹いていただろう

 

「どうすればよいのだ。救急車?こんなんで呼べない。いや、でもオロナインでは無理だ。どうする。まず、これは縫わないことには。やっぱり医者行かなきゃダメだよな・・・。」
心の葛藤。

まずは横浜市救急医療センターに電話してみる。
「すいません、あの、緊急というか、えー、少し切りまして、えー・・・。」
私の話を遮って電話の向こうの彼女は言った。
「じゃあ外科ですね。うちでは外科やってないんですよ。夜間の外科、紹介している電話あるからそっちに架けてください。」

そう言われ、紹介された番号へ架ける。
自宅の住所を告げると、3軒程近隣の病院を紹介してくれた。うち二つは横浜では有名な総合病院。もう一つは今まで聞いた事が無い病院。

だが、大きい病院だと、可愛い看護婦さんが一杯居るはず(妄想)
『どうしました』と聞かれ、『いえ、トゥナイト見てて、踊ってたらですね、えー』なんて、恥辱の極みだ。間抜けすぎる。

「日ノ出町のプリンス」と呼ばれた私の名に傷を付けるわけに行かない。

迷った末、一抹の不安を抱えながらも、その名前もしらない病院へ行く事に決めた。タクシーにケンケンで乗り込み、いざ病院へ。

写真:病院外観
とりあえずモザイク。
「わかるちゃっぁ、わかる。」

ところがタクシーの運ちゃんも、

「XX病院?あー、なんかどっかにあったかな。あそこ潰れたんじゃなかったけ。」

地元のタクシー運転手でさえよく知らない救急病院。
不安で目眩が。
案の定、道に迷って同じところをグルグル。ワンカップ片手に歩いていたオッチャンに道を尋ねる。

「何だ通り過ぎちゃったみたいね。」

運ちゃんそう言うと、一方通行二十キロ制限の道を、四十キロでしかもバックで逆走。ようやく辿り着く事が出来た。

タクシーを降り、足を引きずり院内へ向かう。くすんだ壁。外科の診察室は受付の奥だった。重い扉を開ける。椅子に浅く腰掛けている医者の姿。
だが、どう見ても私より若くみえる。

四六時中「カール」を手離さそうな小デブキャラだ。

そして脇には、看護婦が一人。
こちらは逆にどうみても年寄り過ぎる。絶対年金もらってる。医者と並んでると、親族一同お盆の集まり、婆さんと孫。
大丈夫かと思いつつ、ここまで来たらもう引き返せない。
緊張の色を深める私に、医者が尋ねる。

それにつけてもおやつはカール。

画伯作

「どうしました。」

「いや、あの、テレビを見て踊ってたらですね、つま先を切ってしまってですね、あの、縫った方がいいのかなーなんて、思ったりして、えーと」
かなり恥ずかしい。

「・・・ふーん。」

果てしなく薄いリアクション。
こういうリアクションが一番堪える。
「じゃあ、麻酔打ちます。チクッとするけど我慢して下さいね。」麻酔をつま先に打たれる。ステンレスのトレーに載ったメスが鈍く光る。

「縫いますね、痛かったら言って下さい。」

「ああ、えーと、あれ、何でしたっけ、黒いやつ。」
看護婦に尋ねる医者。
「XXXXXでしょ。(なんて言ってたかは忘れた)」
無表情で看護婦が、黒い糸を渡した。
『やばい、糸の名前も覚えられないのって、相当の・・・。』
私の心臓が夏木ユタカのトーク並のスピードで拍動しはじめる。

まず一針目。いきなりの激痛が私を襲う。

「イッテェー。先生麻酔効いて無いです。」
「そう、そんな事無いと思うけどなー。うん。それじゃあ、もう一本打っときます?
うっときます?って、俺に聞くなよ、素人だ。第一そんなバカスカ打っていいのか。ハマボールのバッティングセンターじゃ無いんだ。
もうどうにでもなれ。早く終われ。
「いや、我慢しますから、続けて下さい。」
俺が悪いんだ、つま先切ったのも、こんな病院選んじゃったのも。

父さん母さん御免。

慣れない手付きで縫いすすめる医者。私は体中から脂汗垂らしながら我慢する。
「あと、どれくらいで終わります?」

「そうだね、難しいんですよ。指の間なんて縫った事無いんですよね。なかなかね。このカーブに合わせて縫うのが、あっ。

ああ、僕はもう傷物になってしまった。

一時間後やっとこの悪夢の様な時間から解放された。
「じゃあ、しばらく消毒にきて下さいね。踊ったりしてあんまり動かさないようにね。」

言われなくても、もう二度と踊らない。

そして数日後、傷口も段々くっついて来たようだ。どんな塩梅かと思って包帯をとりじっくりと観察をしてみる。

「ぬぁんじゃこりゃーーーぁっ」

縫い方が緩く、傷口の薄く張った皮がが上下にずれてくっ付きかけているではないか。
このままでは指の裂け目がずれて酷い跡が残ってしまう。しかし、今さらあの病院にクレームを言って再度縫うのも憚られる。悪化するだけだ。しばし熟考。

「こうなったら自分でやろう。ひとりでできるもん。悲壮な決意。

抜糸前のくっ付きかけた傷口を力ずくで開く。もちろん激痛。そしてちょっぴり涙。

LOVE涙色。

傷口を慎重にずれないように合わせ、セロテープを貼って再度固定。
後はひたすら念ずるのみ。やがて傷口は完全にふさがり少し跡が残ったもののなんとか綺麗にくっ付いた。

私は誓う。もう絶対に、あの病院には行かない。

 

 

その前に夜中にテレビ見ながら一人で踊らない。(涙)

 
  
  
 

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